「どうしてキリスト教は誕生し拡大したのか?」この問いに答えるべく著者のマックはまずヘレニズム・ローマ時代のユダヤ人社会の仕組みを解きほぐす。そこから浮かび上がってくるのは、「ユダヤ人らしさ」の記号が消えかかり、普遍化していく地中海世界の荒波にさらわれそうになって必死に“何か”にしがみつくユダヤ人たちの姿である。こうした情況に「Q資料」やパウロ書簡、その他のキリスト教文書をジグソーパズルのピースのように当てはめてみる。すると、各文書がどのような目的でどのようなグループを対象に書かれたのかが明らかになってくる。マックは、聖書を前にしただけで批判的思考を自動停止させてしまう聖書学者たちに苛立っている。一般的な入門書ではないが、聖書と呼ばれる「タダの書物」を例外扱いして歯切れの悪い論議を展開する既存の学者たちの注解書や概説書にウンザリしている読者にはもってこいの一冊かもしれない。