今回の井堀氏の著書は、盛んに議論されている「格差」論と「弱者」への分配に対する再考を促す書となっている。
加えて、最近の財政事情を無視したバラマキへの警告でもある。
格差社会とよく言われる。著者は、この格差とは何かについての分析から始まり、データで見る限り格差は拡大していない、にもかかわらず我が国で議論されているのは「相対的格差」であるとし、感情的な議論に左右されすぎているとしている。これを是正しようとすると、結果の不平等が行き過ぎ、多くの共産国家に見られたように悪平等となるおそれがあるという。
つい先日、OECD諸国の相対的貧困率では我が国はアメリカに次いで下から2番目であるという発表がなされた。これを世間では衝撃的にとらえ、ワーキングプアや失業率の高まりと結びつけて論じられている。
ところが、本書によれば、相対的貧困率とは、所得が中央値に満たない人の割合であって、我が国では中間層の租税負担率が小さいことによる再分配効果が小さいことと、高齢者の割合が増加していることが要因として大きいという。
また、地方の格差、世代間の格差についても、それぞれ地方も高齢者も政策的に優遇され続けてきた結果、既得権益化してしまっているとし、大胆な提言をおこなっている。
すなわち、公的年金制度を個人勘定積立方式に改革すること、給付付き税額控除制度と納税者番号制度の導入の提言、段階をかけての地方交付税の廃止、などなど様々な政治的タブーともされる問題に切り込んでいくところは気持ちがいい。
そろそろ、年金にしろ社会保険にしろ、将来世代から収奪をし続けることには限界を感じる。
本書がこれからの税や社会保険制度の改革への大きな影響を与えてくれることを期待したい。