宮部みゆきさんの文庫最新刊です。
主人公は、大コンツェルンの今多コンツェルンの会長の娘婿である杉村三郎。彼は手に入れた幸せを失うのが怖い小心者で、普段はコンツェルンの広報誌の編集員をしています。その彼に、義父であるコンツェルン会長から、彼の運転手を勤めていた梶田信夫の娘達の相談を受けるように指示されます。梶田は、自転車に轢かれて亡くなったのですが、その事件は未解決のままで、娘達はそんな父の為に本を出版したいというのです。
大人しく心配性の聡美、十歳ほど年の離れた妹の梨子。彼らはともに父の死を悲しんでおり、妹はその本を出すことが事件解決に繋がると感じて積極的ですが、姉のほうは、実はこの事件には父の梶田の隠された過去に秘密があるのではないかと三郎に相談します。彼女が言うには、妹には内緒にしているが、父には隠された過去があったのだといいます。
かくして三郎は、気だてのいい妻と、4才の娘を溺愛するマイホームパパでありながら、事件について調べ始めます。。。。
さて。
ミステリーとしてはオーソドックスでじっくりと作り込まれた作品で、品よくきちんとまとまっています。文章にぶれもなく、構成にも無理がなく、欠点らしい欠点はなく、さすがは宮部みゆきという作品です。しかし、どうしたものか、ストーリーが地味であることも多少は影響していると思われるのですが、盛り上がりが薄く、平坦な感じがしてしまいます。
また、登場人物の「悪意」が根底にあるものは子供じみた感情からのものであるにせよ、非常に後味の悪いもので、それが読後感を悪くさせています。主人公家族は非常に善人で恵まれた人たちであるが為に、余計にこの悪意がひきたって負の連鎖が続いていくことが悲しくなります。救いがないというか本当の意味での解決がなされていないというか。宮部さんの作品には日常の中の残酷な面がよく描かれますが、これは特にそういう作品で個人的には後味が悪かったです。主人公サイドにたって忘れられたら幸せなんですけれど、姉妹の行く末が気になってしまって後味が悪かったです。