二つのきわめて個人的な意味で楽しい本だった。
ひとつは,自分の本の嗜好が本書で取りあげられているものとほぼ完全に一致していること。取りあげられている本の九割は既読だし,未読のものもおおよそどんな内容か知っている。話題についていける。そもそも,対談者の山田正紀・恩田陸の両氏を始め,ゲストの笠井潔・萩尾望都両氏や各回司会の日下三蔵・牧眞司・三村美衣各氏の本自体が愛読書なのだから,レンジはぴったり一致する。好きなものの話を聞く(読む)のは無条件に楽しい。
もう一つは世代的な一体感。登場する山田・笠井・萩尾の各氏は1940年代後半くらいの生まれ,恩田・日下・牧・三村の各氏は1960年代前半くらいの生まれだったと思う。なぜかこの二つの世代に集中している。私自身が後者の世代に属し,SFに興味をもつ個人的な知り合いも,なぜかこの二つの世代の人が多い。そこで例えば,「果しなき流れの果に」をハヤカワJA文庫で買ったか,日本SFシリーズで買ったかなどという話題に過剰に反応してしまう。学校帰りにハヤカワ文庫を買った,今はつぶれてしまった本屋の前を吹いていた風の匂いがふと感じられる気がして,年甲斐もなく感傷的な気分に浸ってしまった。
この分野に興味があれば誰が読んでも楽しいと思うが,世代的に体験が一致すると,より楽しめる一冊だと思う。