『読書のすすめ』『読書のたのしみ』そして『読書という体験』に続く岩波文庫版読書エッセー集の第四弾。読書好きの面々が語る本との出合いや付き合い方。本書もまた得るところの多い一書でした。印象に残った言葉を幾つか挙げれば:
「もし自分が人を殺してもよいことになったら、人が自分を殺してもよいことになってしまう。殺されたくないなら、殺してはいけないのだ」(55頁、鹿島茂氏の言葉)。
「読書をすることによって、本来は事後的にしか知り得ないことを事前的に知ることができる」(62頁、同)。
「心を空にし、世界にかぎりなく同化しようとする姿勢なくして、どこに小説を読む喜びなど存在するというのか?」(73頁、亀山郁夫氏の言葉)
「ほかに何も望みはないが、墓碑銘にこんなふうに彫ってもらえたらうれしい。「本を愛し、臨終の瞬間まで本をはなさなかった」と」(111〜2頁、黒岩比佐子氏の言葉)。
「誰も傍にいなくても ・・・ 読書はそこにある。世界が自分を見放したと思う時にすら。本を読んでいる間は、物語と作者はあなたとだけ対話している。そこには、とても個人的で親密なやりとりがあり、遠く見えた世界に分け入る感覚がある」(163頁、津村記久子氏の言葉)。
「多忙で性急な現代人は「分からない」ところを縮小させるよりは、「分かる」部分だけをつまみ食いしがちである。その結果、本の陰翳や行間がものの見事に消え失せる。表情豊かな人物像を機械にかけてコピーし、そのコピーをさらにコピーしていくと、しだいに人物のもつ微妙な表情が消えていき、最後には輪郭だけが残るのと同じである。『一般理論』も同じではなかろうか」(233頁、間宮陽介氏の言葉)。
なお、最後に若島正氏の一文を持ってきたのは、その末尾の文意からして本書編集者の心憎い「演出」ではなかろうか(是非一読を)。さてさて、次は何を読もうか・・・