著者はかねてから「文学は実学だ」と言ってきた。
それは、文学を読むことが生活に直接役に立つということを言おうとしているのではなく、何気ない出来事を、平凡な人々を一つの文学として捉えることで、ずいぶん見晴らしがよく味わい深いものになるのだと、著者は言っているのだろう。
サウナでテレビを見ながら、隣の人と話をする、一人が出る、また別の人が入ってくる、同じ話題で、言葉がつながる、そしてまた一人出て行き、、、そんな出来事を、著者は一つの文学として、切り取ってみせる。言葉があるところ、文学がある。ささやかな言葉を大切にすること、言葉は生きている以上、その感受性は鋭敏であること、大文字の主張よりも、小さな呟きを守ること、なるほど文学は実学であると、読者は思わされる。