. 前のレビューを書いた方も、過去に3・4冊以上般若心経を読んだけど途中で全部挫折したと書いておられます。さいわいなことに、”読み解き「般若心経」”でなんとなく全体としてはわかったということで良かったなと思います。この本は、わかりやすく、身近なことを題材にして「般若心経」読み解いています。それによって感動を与えることが出来たならば、それは大切なことが伝わったということでしょう。
般若心経の解説書を何冊読んでも解らなかったという話はよく聞きます。そして、また、たくさんの般若心経解説の本がありますが、著者の余計な自説がしゃらくさい、そんなもの抜きに読みたいという方もいらっしゃいます。そういう方は「般若心経・金剛般若経」中村 元・紀野 一義 訳註(岩波文庫)を読まれるといいでしょう。
その「般若心経・金剛般若経」の方にも、レビューに書きましたが、この本は翻訳者の主観が入らないような配慮がされていて、自分で読み解くための素材を提供してくれています。翻訳者の中村元先生は佛教の研究者として世界の第一人者でした。漢文の経典だけでなく、インドの言葉で書かれた経典、チベットの経典、蒙古の経典、など、様々な国の、様々な時代の経典を研究されています。その中から先生が吟味構成したものが、この岩波の本のサンスクリット語の般若心経のテクストとして使われています。漢文の方は日本で古来最もよく知られ読まれている玄奘訳の般若心経が使われています。共同翻訳者の紀野一義先生は東京大学において、中村先生の弟子でした。そしてお二人は大変深い信頼関係がありました。これは共同で仕事をする上で大事なことです。岩波の他の経典では漢文からの翻訳者とサンスクリットからの翻訳者の意思の疎通が充分でなく、読者にとっても不満なものとなっているものもあります。
般若心経は解説書を何冊読んでも解らないというのは、もともと難しい中身だということがあるでしょう。しかし、昔の人にとって難しいことでも、現代の人にとってはそれほど難しいものではありません。現代の日本においては国民のほぼ全員が教育を受けています。そしてまた、数学の発展ということがあります。
この数学を武器として、道具として使うならば般若心経の「色即是空」は実に明確に理解できます。明治以前の人は教育を受けていた人は一部でしたし、数学の関数を学ぶ人はごく稀でした。第一、関数が出てくるのはライプニッツのころですから17世紀後半です。したがって、般若心経は昔の人には理解が難しいものであったでしょう。ですが、現代では、関数というものを中学や高校でみんな学びます。
今ここに
「般若心経物語」という本が登場し、「色即是空」を数学の「写像」を使って説明しています。(写像は関数という言葉でもかまいません。)おそらくは、この数学での説明は、般若心経の解説本の歴史上、初めてのことでしょう。また、この本は数学の論理だけでなく、宮澤賢治の詩や、金子みすゞの詩、「戦艦大和ノ最期」、「にあんちゃん」、などを通して本当に大切なものを伝えようとしています。この
岩男潔著:「般若心経物語」を先に読んで、そのあとに、「般若心経・金剛般若経」を読めば全てがくっきりと明確にわかってきます。
そのあとに、この“読み解き「般若心経」”を読むと、また違った景色が見えてくるかも知れません