2012年、新たな年の始まりをこんな追悼レビューで始めなくてはいけないのは残念でならない。でも、ひとこと感謝の気持ちを述べずにはおられない。
内藤陳さんは、冒険小説の素晴らしさ、つまり浪漫、騎士道、優しさと誇り、情感と切なさを書評と言う形で教えてくれた人だった。
陳さんの「月刊プレイボーイ誌」の書評「読まずに死ねるか!」がオモシロいとの噂を聞いたのは高校3年の秋頃。
受験を控え、さすがに小説を読むのも躊躇われる中、それでも氏の絶賛ぶりと、前年ジョン・スタージェス監督で映画化されていた事を思い出し手に取ったのが、ジャック・ヒギンズの「鷲は舞い降りた」。
一読後、モチロン、その面白さと素晴らしさに大感激してしまったのは言うまでもない。
以来、その連載は進学で上京してからも読み続けたし、そこで薦められる本は財布の中身と相談しながらも読破したものだ。
ダジャレとギャグを飛ばしながらの血湧き肉踊るような独特の文体。
飽くまで自らをアマチュアのお薦め屋と称しながら、冒険小説の世界観と作家たちへの愛に溢れた熱烈な語り口。
更に、それ故に、時に、駄目なモノはダメと慨嘆しながら怒り悲しむファン愛。
本当に書評に触れるだけで、ソウルフルな想いがこちらにも熱く心に響いていた。
“ジャック・ヒギンズを知らない?死んで欲しいと思う”〜
後に立ちあげた日本冒険小説協会名誉会長に就任したヒギンズを讃えながらも、
“冒険小説好きな人間は人の好みに自分の好みを無理に押し付けないし、優しさ、思いやりがなければ冒険小説の良さなんか分からない”と説いていた陳さん。
熱い中にも優しさに溢れた人だった。
AFの会公認酒場「深夜プラスワン」に怖々ながらゴールデン街まで呑みに行った時も、この若輩者を優しく接してくれたそのハートの温かさは忘れられない。
陳さんが愛した「女王陛下のユリシーズ号」の乗り組み員の如く、死に直面しながらも己の矜持を以てそれに対峙し、誇りと情愛を持ちながら死んでいく。
多分、その生涯の最期は、正しく冒険小説の男たちそのものだったんじゃないかと確信する。
謹んでご冥福をお祈り致します。
(追記)本書は、話題になったブックレビュー本「読まずに死ねるか!」に続く第2弾。
陳さんが熱愛する諸作に、当時日本でも巻き起こっていた“冒険小説の時代”を牽引した北方謙三、船戸与一、志水辰夫らの傑作たちについても熱く語られている。