この方の翻訳はどれも現代の日本語でとても読みやすいです。センテンスの切りどころがほかの翻訳本と違い、それが読みやすさにつながっているのか、理解できなかった箇所が今回「なるほど、そういう意味か」と理解できました。テンポも良く、アンがウェントワース大佐と7年ぶりにあったシーンの短い単語が続く書き方は、英語の原文に一番近いと感じました。主人公アンの焦る様子がすごく伝わってきます。そして最後のウェントワース大佐の手紙も、いちばん甘い(ロマンスっぽい)翻訳になっていると思います。
オースティンの全作品ではこれが一番好きです。人間の心の動きをものすごくよく捕らえていると思います。200年前でも社会の中で生きていくには?人とかかわっていくには?など、まったく現在の私たちと変らない不安や喜びが書かれています。オースティンを読むといつも私は、人間はそうそう変らないものだと親近感が沸き、私とオースティンが200年を超えてつながる気がします。よい文学というのはそういうものなのだと思いました。
最後の手紙のシーンはハラハラドキドキします。手に汗握るとはこのことか?です。オースティンが病身をおして書き換えたというこのシーンは、作者が、そして作品が永遠になった理由であると思います。書き換える前のシーンはBBCのドラマで挿入されています。ですが絶対に書き直したこちらが感動は大きいです。これが絶筆だとのことです。
高慢と偏見のエリザベスのように、カラッとした明るい主人公ではありませんが、人間としてはこちらのアン・エリオットが本物のような感じがします。