本書は心理学の学会誌に発表されたデータを基に、説得に役立つヒントを提供する。経験や精神論ではなく、科学で実証されたデータを基にした説得術という点が本書のユニークな点であるという。
「いったん要求をのませてから、不利益を追加する」「事例をたくさん挙げる」「権威主義的な人は肩書きを持ち出す」「快適な気温の方が説得しやすい」など、興味深いポイントがデータとともに多く挙げられている。すぐにでも応用できそうなヒントも多数ある。
ひとつ気になる点は、本書で参照されているデータの多くが、歩行者や学生の被験者を対象に行った実験であり、何かを依頼して承諾してくれるかや、何かの説明をして共感を得るかといった方法になっている点だ。しかし、日常生活の中で起こる説得は道行く人のような初めて会う人が対象ではなく、会社の同僚や上司、取引先や役所の担当者、家族などすでにつきあいがある人が対象であることが多いだろう。既知の相手を説得する場合、本書で紹介されているテクニックはどの程度通用するのかに言及して欲しかった。本書で紹介されている事例のいくつか単純化しすぎか極端であり、実際はもっと多くの要因が働いているように感じた。
内容は面白いのだが、学問とビジネスの溝を埋め切れてないような印象が残った。この点を補完する続編に期待したい。