「ノルウェイの森」の隠された主人公、魔性のレズビアン少女は、なぜ「影」の主人公であり続けねばならなかったのか?直子の死の真相とは?レズビアン、ひいては女性が置かれてきた状況を社会・文化の歴史を紐解いて、著者の女性学の幅広い知見を駆使して、独自の視点から村上作品のミステリーが解き明かされていく、スリリングな文芸評論でした。時代と時代の狭間に生きる女性の悲しみ、苦しみ、生きざまが生々しく伝わってきますが、知の力でそれを掬い上げているので読み応えがあります。ほかに「スプートニクの恋人」について、そして村上以外の日本文学における女性(レズビアン)表象を扱ったあとがきも圧巻です。