この本は、講談社のPR誌で2年間にわたり連載されていた文章が基本になりながら、章によっては追記の註のほうが長いという、変わった形式になっています。
私は西洋哲学の原典を読み通したこともなく、日本の現代思想などを折に触れて読む程度の知識と頭脳しか持ち合わせていません。そんな私が読んでみて、おもしろさは抜群です。決してすらすらとは読めませんが、その理由は筆者が感覚で哲学していないからです。論理的に、一歩一歩自分で考えた言葉で文章が進んでいくので、その歩みについて行くのは骨がおれます。ただし、一つの章を読み終えた時、間違いなくこれまで知らなかった世界が開けてきます。それに随所で可笑しな造語を使って笑わせてくれたり、読者を諦めさせまいと筆者が助けてくれている気さえしました。
「世の中に絶対は絶対ないのか」「科学は世界を語りつくせない」など、「語りえないもの」の周囲を予感として語ろうとした本です。 分析哲学についての知識があれば、より理解が深まるのかもしれませんが、決して知識のない読み手を排除するような本ではありません。むしろ、日常の言葉でほんとうに哲学をするという難技に取り組んだ好例といえると思います。最後のあとがきに掲載された短い論文が、筆者の立ち位置を表しています。ここから読むとよいかもしれません。 おすすめです。