江戸時代の実在の姦通事件を題材にした小説で、井原西鶴の『好色5人女』、近松門左衛門の『大経師昔暦』、映画『近松物語』等、これまでにも数々の小説やお芝居の題材となっているようです。本書は、おさんと茂兵衛の不義密通事件も題材にはしているのですが、この話だけを扱っている訳ではありません。1680年頃を時代設定に、あやめという牢人の妻の不義とどん底に落ちた彼女を助ける人々の人情、茂兵衛に恋焦がれる人形問屋の娘おみつの狂気なまでの女の怨念、おさんの夫で大経師である権之助の商売と政治の駆け引き、武士の没落と商人の台頭、京から江戸への時代の移り変わり等、多彩な糸で織りなされた小説となっています。馴染みの薄かった大経師や暦の変遷等の話も、なかなか興味深かったです。面白い一冊でした。