強迫性障害は強迫観念と強迫行為からなる障害であり、認知行動療法が極めて有効であることが確
認されている。ただ、認知の変容を強迫観念に対して行ってもあまり有効ではなく、強迫観念は認知
ではなくトリガーとして理解することが有用のようである。そして強迫観念に対して生起する自動思
考を扱うことが良いようである。それは一般の健康な人にも強迫観念は存在しているという実証研究
から導き出されている。すなわち、強迫観念そのものが問題と言うよりも、そのことに対する認知が
問題ということである。このことを定式化したのがサルコフスキスである。そして、不安に暴露し、
強迫行為を反応妨害することにより、恐れていたことは実際には起こらないことを実証し、馴化する
ことにより、不安と強迫行為が減っていくのである。
パニック障害は微細な身体的な反応を破局的に解釈し、それによって強い不安が生起する障害であ
る。そして不安が生起しないように、回避行動によって対処するが、その対処そのものが不安を慢性
化させてしまうのである。その為、強迫性障害と同様に不安に曝露し、実際にはパニックや不安が起
こらないことを体験的に理解していくことで症状が消去されていくのである。
バーチウッドは統合失調症に対する認知行動療法の研究を行っている。ただ、統合失調症という障
害そのものに対してのアプローチではなく、幻聴や妄想といった症状に対するアプローチとなってい
る。古典的には幻聴や妄想は了解不可能・訂正不可能と言われ、説得によって消そうとしても消せな
いし、幻聴や妄想に付き合うと助長されるということが言われており、当たらず触らずの対応をする
ことが一般的であった。しかし、最近の研究では認知行動療法によって幻聴と妄想に関しては十分に
対応できるという知見が積み重ねられてきているようである。それは幻聴や妄想は統合失調症などの
精神病だけに見られるのではなく、一般の健康な人にもかなりの高確率で見られるのである。それは
強迫性障害の強迫観念と同様である。そして幻聴については、幻聴をトリガーとして引き出される自
動思考を変容していくことは可能である。また妄想は訂正不可能ではなく、妄想が事実である根拠や
反証を丁寧に検討することにより、現実検討力を取り戻し、妥当な認知に変えていくことも可能なの
である。