著者の和田氏は電車修理工をしていた旧国鉄マンですが、20年ほど前に福祉の世界へと
飛び込み、現在は総合介護サービス業にて居宅介護を統括されているそうです。
その和田氏が、ブログを中心に綴ってきたコラムを1冊にまとめたのが本書になります。
福祉・介護の分野、特に認知症に纏わる書で期待されるのは、認知症ケアや介護の内容と
いったことになるのだと思いますが、本書はそのような方向からは一線を画しており、
むしろ、認知症の方に関係する人々に対しては厳しい言葉も並んでいるかと思います。
それは、しかしながら「人が人として生きることを、人が人として支える・支え合う」
という姿勢を明確に打ち出しており、そのための礎となる著者の思想の底流がしっかりと
記されています。
なぜ介護に対して、ノウハウ的なことを述べていないのかと思いながら読み進めましたが、
それは、常に人はそれぞれに個性があり、それが認知症になったからといって変化する
訳ではなく、人に接する際に個別に対応を変える必要があるのと同様であり、他人に
自分を伝え、他人のことを知るためにコミュニケーションを通じたトライ&エラーで、
相手の考えを理解することが重要である、と主張されています。
例えば、介護に関する専門職に就いている方が、そのような技術を磨くにはまさに
目の前にいる認知症の方が教えてくれるわけであり、すべては現場にある、ということを
著者は述べたかったのであろうと私は思いました。
どのような職業であっても通じることですが、やはり学ぶべきことは現場にある、
を改めて知るよい切欠となりました。
認知症の方のご家族や専門職として関係している方には是非ご一読いただきたい書です。