信濃毎日は長野県の有力地方紙。その発行部数48万部の紙面で2010年1〜6月に掲載されたキャンペーン企画記事をまとめたという1冊で、認知症患者に寄り添ったうえでの「実名」報道、腕利きのアンカーがまとめたとおぼしき、緊張感に満ちた、無駄のない文体など、読み応え十分の内容だった。7部構成のテーマ分けが必ずしもうまくいっておらず、また県外で取材した記事の「必然性」がいま一つ伝わってこない気味があり、その分満点から☆を一つ減じたが、ともあれ、タイムリーで上質のルポルタージュになっていると思う。
同紙の一連の報道は10年度の日本新聞協会賞(編集)、JCJ賞、ファイザー医学記事大賞などを受賞しており、それら報道界などからの高い評価もむべなるかな、である。評者も同じ業界の末端の外れに棲息しているが、冷静・客観的な記述の合間に、情感のこもった、それでいて感情に流されていない観察・考察が頻出し、めったにないことながら、知らぬうちに涙腺を刺激された。誰でもいつしか年をとり、やがて多くが認知症を患う。全くもってひとごとではないということだ。