著者は年間約200日、温泉地を訪ねる日々を40年余り続けた方です。結果、全国の温泉地約3800のうち3292以上訪問、全国の温泉施設約19000のうち8000に宿泊しました。ときどきこのような選集を出版しています。ちょうどこの1年後に急逝されましたので、これが最後になりました。各温泉に小さいがモノクロ写真がついています。この前では10年前に「日本の温泉260」を出しています。それと比較すると、野湯、共同湯、山小屋は温泉遺産の範囲外らしく入っていません。また、温泉遺産の認定を受けていない宿泊施設が今回入っていないのはあたりまえですが、須川温泉、姥湯などもおちています。逆に前作に入っていない温泉が半数を占めていて酸ヶ湯、万座温泉などもあり、まさかそれらがこの10年に初めて入湯したものばかりとはとても思えません。総合するとこの著者は厳密に上位から数に満ちるまで取り上げようという意識はうすいと思います。源泉かけ流しの湯船がある宿泊施設は全国に2800あるといいますから、いい温泉はどだい100では収まりきらず彼のベストは400くらいで本書はその一部ではないかと思います。両方に入っているはげノ湯などはその上位にランクされるでしょう。それから巻頭のカラー24ページで温泉遺産の見当はつきますが、詳説されているわけではなく同じテーマなら「温泉遺産」のほうが優れていると思います。まあ100でも普通の生活人にとっては花見と紅葉狩りで温泉に行くとしても50年分です。貴重な時間とお金を大加水、強循環の名ばかり温泉に費やさないことが、温泉シーンをひっぱって非日常が日常になってしまった奇人の追善になると思います。