最初に、このレビューは、本書を教養書として読もうとする人を対象にしていることを断っておきます。
本の記述内容、分量、資料、装丁そして価格は、ほぼ申し分ないと思います。また、「まえがき」で編者は、歴史を学ぶ上での基本姿勢を提示しており、非常に短い文章ですが、そこを読むだけでもためになります。
苦言を呈するなら、文化史の記述に工夫が欲しかった点です。教科書「詳説日本史」に準拠しているということなので、やむを得ないのかもしれないけれど、文化史が、時代ごとに分断されて叙述されているので、文化の変遷、他の時代との相違点が押さえづらいのではないでしょうか。どうも、日本史の教科書の類は、政治史を重視するあまり、経済史、文化史の順で編集・叙述方法に難があると思います。これらの分野を通史として叙述した本があればいいのですが。
なお、長めの余談ですが、この本が受験に役立つのかいうと、個人的には、難しいのではないかと思います。その理由は、第一に分量が多いこと。とりわけ、受験科目が多い人には時間の制約からいって用いる際は注意が必要でしょう。第二に、論述試験が課される大学では、知識の補充は教科書レベルにとどめ、実際に過去問に当たる方がよいのではと思います。第三に、これは憶測ですが、私立大学のうち難問・奇問が出題されるところについては、この本で触れていない用語が問われるのではと思いますので本書では対処しきれないのではないでしょうか。詳しくは、学校の先生か、予備校の先生に聞いてください。
最後に、教養書としては、ほぼ申し分ないことを繰り返して申し上げます。なお、かつては、いわゆる黒本の「
大学への日本史」という本があったやに聞きますが、読んでみたいものです。復刊はないのですかね。