普通では出会わないような人間同士を結びつけ、思いがけない化学反応を起こさせることで、
双方に幸福をもたらすという、まるで触媒のような働きをする謎の女性・詩羽の日常を描く、
連作短篇集。
他者と共存したほうが、結果的に自分の利益につながる――。
生きていく上で、過去に原因を求めても無意味だ――。
上記のように、詩羽の根幹にあるのは楽観的なまでの論理への信奉です。
しかし彼女は、現実において人が論理のみで動く存在ではないことも重々承知しています。
それを踏まえた上で、つまらない意地やこだわりを捨て、論理に従ったほうが、
はるかに生きやすく楽しいことを相手に合わせたやり方で提示していくのです。
詩羽のような存在は、むろんファンタジーに過ぎませんが、彼女が示すアイディアや工夫は
ちょっとした意識の変化や努力で、充分日常生活に活かしていけるようなものばかりです。
決して、無根拠な善意の押しつけではありません。
まあ、まっとうすぎる詩羽に少々気後れも覚えてしまうのですが、
そこは説教オヤジ・山本弘の持ち味ということでスルーできます(w
また、連作短篇らしい趣向も抜かりなく凝らされており、最後の短篇においては
一瞬メタ的にオトすのかと見せかけて実は……という心憎い演出がなされています。
(第三話での軽い叙述トリックとそれを小道具で暗示する手際も秀逸)
すべての人間関係が繋がり、美しく円環が閉じるように終わる結末は出来すぎのよう
にも感じますが、奇跡の人・詩羽が存在する本作では、これが「正解」なのでしょう。
▼付記
乙一さんは
エマノンを連想したようですが、私は入江紀子さんの
『のら』が頭に浮かびました。
まあ、同じ“家なし娘”でも、その信条は随分違いますが(w