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詩という仕事について (岩波文庫)
 
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詩という仕事について (岩波文庫) [文庫]

J.L.ボルヘス , 鼓 直
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

20世紀文学の巨人ボルヘスによる知的刺激に満ちた文学入門。誰もが知っている古今東西の名著・名作を例にあげ、物語の起源、メタファーの使われ方の歴史と実際、そして詩の翻訳についてなど、フィクションの本質をめぐる議論を分かりやすい言葉で展開する。ハーヴァード大学チャールズ・エリオット・ノートン詩学講義(1967-68)の全記録。

内容(「BOOK」データベースより)

詩の翻訳の可能性/不可能性、メタファーの使われ方の歴史と実際、そして物語りの方法についてなど、フィクションの本質を構成する「詩的なるもの」をめぐる議論を分かりやすい言葉で個開する、ハーヴァード大学ノートン詩学講義(一九六七‐六八)の記録。

登録情報

  • 文庫: 240ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2011/6/17)
  • ISBN-10: 4003279255
  • ISBN-13: 978-4003279250
  • 発売日: 2011/6/17
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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12 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ロビン トップ1000レビュアー
 20世紀アルゼンチンの盲目の詩人、作家ホルへ・ルイス・ボルヘスによる講義集です。6章から構成され、最後に編集者ミハイレスクの解説が付いています(訳者のあとがきもあります)。
 先日岩波文庫新刊の棚をうろうろして偶然出会い、<詩>という言葉に惹かれて購入しました。ボルヘスは現代ラテンアメリカの高名な文学者なので私も『伝奇集』くらいは持っていたのですが、購入以来数年間積ん読状態のままで、結局そちらより本書を先に読んでしまいました。
 まず本書においては、講演ということで文章が語り口調であるためか、予想を遥かに越えたその読みやすさに驚きました。ボルヘスは難解な作家であるというイメージを持っていましたし、実際小説作品などは理解しにくいのでしょうが、本書はとにかく語り口が素直で、専門用語なども全く使われないためさくさくと読めてしまいます。講演から立ち昇るボルヘスの人柄が非常に気さくで気取りがなく、親しみやす過ぎると言っていい位であったのにも驚きました。
 
 さて本書はボルヘスが<詩>という芸術の秘密を我々に語ってくれる講演集です。ボルヘスはダンテやキーツ、ホメロス、また作品では『千一夜物語』が好きなようで、今回私が併読したボルヘスのもう一つの講演録『七つの夜』にも彼等の名前や作品が出てきました。その他にも非常に多くの詩人や作家、時には画家の名前が引用されますが、私は知っている人が半分、知らない人が半分位でした。英国の詩人・作家が比較的多く、主だった名を挙げればシェイクスピアやキプリング、ジョイス、ハズリット、スティーヴンソン、スコット、カーライル、ロセッティ、コールリッジ、ポープ、ブラウニング夫妻、ワーズワース、テニスン、ミルトン、チョ−サー、ジョン・ダン、作品ではディケンズの『ピクウィック・クラブ』やドイルの『ホームズ』等も。ドイツからはゲーテやショーペンハウアー、カントやニーチェ、ゲオルゲ。アメリカもメルヴィル、トウェイン、エマソン、ホイットマン、ロングフェローなどが論じられ、無論ボルヘスのホームグラウンドであるラテンアメリカの大詩人ダリオや劇作家カルデロン、セルバンテスの傑作『ドン・キホーテ』、アルゼンチンガウチョの歌『マルティン・フィエロ』等も引用されます。アジアからは老子、イスラム圏からはハーフィズら。要するにボルヘスの読んだ作品と知識は浩瀚にして該博ということです。こういう半端でない読書量と博学ぶり、また素直で気取らない人柄は、なんとなく大江健三郎さんに似ているなあと感じたのは私だけでしょうか?
 
 私は最愛の詩人の一人であるテニスンやヴィクトール・ユゴー、ホイットマンらの詩文(翻訳文)が引用され、また彼らについての私の知らない情報が紹介してあると嬉しくてキャッキャしていましたが、フォーゲルワイデやアセンス等、本書中に訳注はあるものの辞書で引いても出てこない詩人も多く、やや消化不良な気味も。今後また調べていきたいと思います。
 
 ともあれボルヘス入門としては非常に良い本だと思います。お勧めです。
このレビューは参考になりましたか?
16 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By スワン トップ500レビュアー
本書は1967年秋から68年春にかけて、ボルヘスがハーバード大学で行った「詩」に関する6回の講演の記録である。
各回のテーマは「詩という謎」、「隠喩」、「物語り」、「言葉の調べと翻訳」、「思考と詩」、「詩人の信条」となっている。

老獪なボルヘスのことだから、その講演の骨子をまとめることは不可能だが、あえて挑戦してみれば、以下のようになるだろうか。

・詩のもっとも古い形は叙事詩である。(66ページ)
・その叙事詩は、<抒情詩>と<物語>に分裂した。したがって、小説も詩だ。(71ページ)
・そうした詩に接するとき大事なのは「詩を汲む」ことである。(8ページ)
・書かれた詩は死んでいるが、読み手が「詩を汲む」と言葉は息を吹き返す。(10ページ)
・詩を成り立たせているのは表現による暗示である。(166ページ)
・その有力な方法は、異なるふたつのイメージを結びつける隠喩だ。(61ページ)

そういって、英語で、スペイン語で、ボルヘスお気に入りの一節を引用するが、この点だけは味わいきれない。もちろん訳者は訳文をつけてくれるが、外国語の音を音楽のように聞くわけにもいかず、どうしても隔靴掻痒になってしまう。そこで――、

・われわれは詩の意味を考える前に、その美しさを感じるのだ。(119ページ)

といわれる例として、私はたとえば、額田王の《あかねさす紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る》(『万葉集』巻一)を思い出した。この絶妙な色彩感覚は美しいと思う。

近代なら、たとえば堀口大學の「雪」を思った。
《雪はふる! 雪はふる!/見よかし、天の祭なり/……/冬の花弁の雪はふる!/地上の子らの祭なり!》

・詩人は言葉を魔術的なものに変えてしまうのだ。(112〜3ページ)
・それゆえ、詩の翻訳は言葉の移し替えではなく<再=創造>と考えるべきではないか。(101〜2ページ)
・肝心なのは詩行の背後に隠れているものだ。(158ページ)
・人の長い一生は<自分が何者であるか>を悟る一瞬につづめ得るとすれば、私の場合、もっとも重要なのは、言葉が存在し、それを詩に織り上げるのが可能だということを知ったとき(詩人になろうと思ったとき)だった。(145〜6ページ)

読みたかった本なので一気に読了してしまったが、ほんとうはじっくり読むべき本である。しばらく間を置いて再読したい。
★がひとつ足りないのは、ボルヘス愛好の詩の精髄を原語で味わいきれないためだ。もちろん、こちらに責任があるわけだが……。
このレビューは参考になりましたか?
3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By シネマA トップ500レビュアー
 1967年秋から68年春にかけて全6回、アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899−1986)がハーヴァード大学で英語を用いておこなった詩学講義の録音テープを起こした貴重な一冊です。

 詩の神髄について韜晦せずに直截に語っていて、共感した指摘が多々ある。メタファーの類似性、小説の死、詩の翻訳の可能性など、すこぶる示唆に富んでいる。衒学的かつ思弁的な傾向の強いボルヘスの著作のなかでは、かなり理解しやすい部類に属するのではないかしら?

 目の不自由なボルヘスが、博覧強記の記憶の引き出しのなかの英独西語などの詩を自在に引用しながら教壇で話すすがたが目に浮かぶようです。当時のハーヴァードの学生たちは、いったいどれくらい理解できたんでしょうね!

 鼓直先生がラテンアメリカ文学の紹介者としてわが国の第一人者であることは言うまでもない。英文著作の訳書は本書が初めてと、訳者あとがきで述べておられるところには、謙虚なお人柄が窺われて好感が持てます。しかし、もう少し日本語としてこなれた明晰な文章に翻訳していただけたら一層よかったのに、という気がしなくもない。まあ、ボルヘスがひねくれた気障な英語で喋ってるせいでもあるけれど。

 とにかく、ボルヘスの愛読者のみならず、詩や文学に深い関心をお持ちの読者諸賢にとって、一読の価値がある良書だろう。難しい個所はすっ飛ばしてでも通読すれば、趣旨はなんとなく理解できると思います。
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