作者は、コピーライター。
これが小説デビュー作ということだが、
ずいぶん丁寧に物事を見つめる人だと思った。
洋服というものを通じて、
洋服を選ぶということを通じて、
その向こうにいる一人一人の女性、
その一日一日の小さな心の動きが
一編一編の短編に描かれている。
すべての物語を通じて、
登場人物はどれもどこにでもいそうな女性だが、
彼女たちが洋服を選び、買い、着るという当たり前の行為が、
とても素敵なことのように思える。
全体の構成も特筆すべきものではないが、決して悪くはない。
この本は、ルミネの広告を小説化したもの、ということだが、
この小説を読んでから、ルミネの広告を見ると、
以前の印象とは全く違ったものに見えるだろう。
広告のコピーは、鋭い切り口や、大胆な言い回しに目を奪われ、
それ自体は、好き嫌いが分かれるところだと思うが、
一本一本のコピーは、思っていたよりもずっと
緻密に計算されているものなのかもしれない。
一つの物事をどれだけ丁寧に、深く見つめられるか、
ということが作家に必要な資質の一つだと自分は思っている。
そういう意味では、次回作があるなら、ぜひ読んでみたいと思う。