寒々とした冬のボストン、早朝からパブでビール片手にピンボールに興ずるくたびれた男の横顔のシルエット。
かって有能だったものの、今ではすっかり落ちぶれてしまったアル中の初老の弁護士。
新聞の死亡欄を見ながら、小銭稼ぎを細々と続ける男に、降って湧いた儲け話は、巨大病院の医療ミスに絡む示談話。一獲千金と簡単に事を進める男、だが、被害者であるまだ若い女性の余りに痛ましい病床姿を見るにつけ、忘れ去っていた“自尊心”と“良心”が呼び醒まされる。
映画「評決」が感動的なのは、人生を諦めていた男が、もう一度自己の復権を賭ける魂の再生のドラマを、よくあるハリウッド的な爽快なエンタテインメントとしてではなく、等身大の人間として、その弱さと情けなさも描きつつ、しどろもどろになりながらも、勇気を振り絞ってそれに立ち向かっていく姿に熱い共感を覚える処だ。
第1級の法廷サスペンスでもある為、これ以上は触れないが、単純なハッピーエンドにはなりえない苦い幕切れが、いつまでも余韻に残る。
主人公を支えるS・ランプリングにJ・ウォーデン(昨年逝去、合掌)、そして、狡猾かつ強力な相手側弁護士集団を率いるJ・メイスンと名優たちの演技も見事だが、何と言っても、ポール・ニューマンに尽きる。クライマックスでの最終弁論は、“民主主義の原点”と、ニューマン自身の人生哲学がオーバーラップされて、極めて感動的だ。
この名作が初DVD化にしていきなりの廉価化!FOXの英断に感謝しつつ、映画ファンは必見の価値ありと叫んでおきたい。