戦前の日本軍は天皇の軍隊であって、日本国民の軍隊ではありません。
戦闘に従事する将兵の個々の思いに家族や郷土への愛着、防衛意識があっても、
組織としての大日本帝国陸海軍に国民の軍隊であるとの自覚はありません。
国体護持とは天皇制を守ることで、軍の最高指揮権である統帥権は天皇にあり、
天皇(天皇家)のために身命を賭すことが将兵に常に求められました。
このような軍隊の特質が沖縄戦で如実に表れました。
沖縄の日本軍に沖縄県民の安全や保護を第一に考える選択はありません。
軍官民一体の総力戦という名目の下で、軍事作戦の手段として県民は利用され、
日米双方の軍によって殺され、死んでいきました。
闇に隠された無非道な婦女子への暴行もあったでしょう。
このことが本書のルポルタージュで検証されています。
沖縄からスターが輩出する現代では理解に苦しむところですが、
戦前の日本では、都会人が地方人を田舎ものとさげすむ以上の、
沖縄県民への差別意識が確かにありました。
そのことも沖縄戦での将兵の意識に影響があるでしょう。
しかし本土決戦になったらと想像すると、概ねは沖縄と同じだったろうと思います。
帝国陸海軍の至高の使命は国体護持ですから、
本土の諸県民も沖縄県民と同様の扱いを受けたでしょう。
内地が白兵戦の戦場にならずにすんだこと、現在の沖縄の米軍基地の存在を思うと、
海軍陸戦隊の太田少将の、最後の電信文を日本国民は忘れてはいけないと思います。