よくもまあ、この企画で完成させてくれたなぁと思う。しかも、すこぶる面白い。
高倉健がこれほど本音を語るとは……、何故健さんが映画に出ないのか、それが分かるだけでも凄い。
中国との合作が多い佐藤純彌監督の発言では、かつて聞いたことのない中国での興味津々の情報に溢れている。
栗原小巻の発言で今更ながらに驚いたのは、聞き手が中国人である劉文兵さんであるからだろうが、自らが新劇女優として運動である思想面をはっきり語っていることだ。これは劉さんが穏やかではあるが非常に知的な学者さんであることへの、長年の渇望の発露ではなかろうか。とにかく、これほど熱い栗原小巻は初めてで、それを引き出した本書の功績は量り知れない。
山田洋次監督のインタビューでは、監督自身がよく満州からの引き揚げを語っていることもあり、あまり新鮮な驚きはないようだった。しかし、劉文兵さんから発せられた『馬鹿が戦車でやって来た』と中国の『白毛女』の類似点に関する指摘などは、作者ならではの切口だ。日本人同士の対談でいくらでも出来るレベルのものなら不要なのであり、この本は劉文兵さんだからこそ聞けること話せること多数で成立しているのが素晴らしい。それにしても、山田洋次が話す『男はつらいよ・大連慕情』が実現していたなら、どれほど楽しかっただろうか。
この本の白眉は、実は最終章の木下恵介篇での著述である。
映画人交流を通して、いまギクシャクしている両国の関係を何とか出来ないかと、劉文兵さんは考えたのだろう。それはまた、我々日本の映画ファンの願いでもある。
そういう祈りに満ちた書であると、ボクには見えた。
この本が760円?何という安さだろう。
絶対にお勧めできる労著であったこと、安堵しました。