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証言・フルトヴェングラーかカラヤンか (新潮選書)
 
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証言・フルトヴェングラーかカラヤンか (新潮選書) (単行本)

川口マーン 惠美 (著)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

ベルリン・フィル全盛時代の楽員たちが、初めて語ってくれた本格インタビュー集。ドイツ精神主義の化身・フルトヴェングラーと、飽くなき音響美の追求者・カラヤン。共同作業した音楽家でなければ分からない二大マエストロの秘密を、臨場感溢れる語り口で解き明かす。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

川口マーン 惠美
大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。ドイツ・シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科卒業。シュトゥットガルト在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 286ページ
  • 出版社: 新潮社 (2008/10)
  • ISBN-10: 4106036207
  • ISBN-13: 978-4106036200
  • 発売日: 2008/10
  • 商品の寸法: 18.8 x 13 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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5つ星のうち 5.0 一気に読ませる, 2008/10/26
 雑誌に載っていたものを大幅加筆したインタビュー集である。インタビューの印象が次へ次へと繋がるので読み出すと止まらなくなる。語り口も柔らかい。
 両指揮者に対する肝心の評価だが、「ああ、フルトヴェングラーを知っている団員は、皆フルトヴェングラーのファンですね」(カール・ライスター)というように、両者とも体験している古参団員は明らかにフルトヴェングラー寄りだ。
「フルトヴェングラーの音楽に対する態度は、最高のものでした。しかし、カラヤンの態度が、演奏の邪魔になったことはありません」(ハンス・バスティアーン)
「今まで数え切れないほど多くに指揮者の下で演奏したけれど、フルトヴェングラーは、私にとっては、絶対的に最高の指揮者でした」(エーリッヒ・ハルトマン)といった具合である。
 フルトヴェングラーに対する評価はもっぱら音楽に関するものだったが、カラヤンへの評価は音楽以外のことにも及び、そちらのほうは悪評も多い。カラヤンの評価が高くなるのは本書の後半で、多くはカラヤンのみを知る団員だ。とはいえディートリッヒ・ゲアハルトはカラヤンにかなり辛辣である。
 カラヤンの晩年に関しては哀れとしかいいようがない。「カラヤンはね、自分の人生にディミヌエンドを持たなかったのですよ」というカラヤン派の一人、ライスターの言葉がカラヤンという人物の生き様を表している。老いることへの抵抗。聴力を失うといったフルトヴェングラーの悲劇とはまた別の次元の悲劇だ。
 フルトヴェングラーは音楽人間だった。フルトヴェングラーに意識は音楽にのみ向いていた。しかしカラヤンの意識は音楽とともに自分自身にも向かっていた。そこが二人の決定的な違いだと私は思う。
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6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 エッセー風だが楽しめる, 2008/10/26
フルヴェンかカラヤンか。それを元ベルリン・フィル団員たちに聞いて回る、という本。著者はジャーナリストではないので、取材対象に鋭く迫るという風ではない。たとえばカラヤンがバレンボイムを嫌っていたという証言などはもっと追及してほしかった。そういう隔靴掻痒の感はあるが、取材というより元団員たちとの温かい交流のなかから、音楽家たちの肉声が伝わってくる。

フルヴェンかカラヤンか、という点では、有名なアンチ・カラヤンのテーリヒェンを除いて、カラヤンへの高評価が目立つ。カラヤンのおかげで彼らはもうかったのだからそれも当然といえるが、やはりプロたちを説得するだけの音楽的力量があったのだなあと思わせる。読後、カラヤンの「響き」をもう一度聴き直したくなった。

偶然、仲丸美絵の朝比奈隆の評伝『オーケストラ、それは我なり』と同時に読んだので、カラヤンと朝比奈が頭のなかで重なった。同書によれば朝比奈は反カラヤンのフルヴェン派で、両者の音楽スタイルは対照的だが、晩年にその独裁制がオーケストラと不協和音をかもす過程がよく似ている。どちらもそのカリスマ性が客を集めたが、オーケストラが奏でる音楽と指揮者の関係は真に芸術的だったのか? 華々しい成功の陰にある「独裁者」の晩年の孤独がどちらの本からも伝わってくるのである。
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4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 テーリヒェンへのレクイエム, 2008/12/4
タイトルからして、かつて物議をかもした書物の著者でもあったテーリヒェンへのオマージュであることは明白なのですが、そのオリジナルに決して引けをとらないどころか、かえって真実を洗い出す手助けとなるかのような書物です。

もちろんサンプルのとり方にも「現存する、元ベルリン・フィルのプレイヤーの中で、取材をオーケーした人物」という無視できないバイアスがかかっているのですから、客観性には限界があります。しかしながら、あの戦中戦後を体験した楽団員本人たちから、いまなおフレッシュな感想を引き出し得た、という事実は動かしがたい価値をこの本に与えています。

そこにあるのは、フルトヴェングラーと対をなすかのような政治的無邪気さであったり、オーケストラとは指揮者の忠実な楽器でありさえすればよいのだというプロフェッショナリズムであったり、そうはいっても指揮者なんてお飾りで、本当に演奏しているのはオーケストラなのだというプライドだったり、ずいぶん稼がせてもらった人の悪口など言えない、という「勝ち組」の美学だったりします。そして、「世界最高のオーケストラ」と言われたベルリン・フィルが、たゆまぬ技術の研鑽の末に、団員のポストを手に入れ、そこでの生活を維持するために「世界一」を演じてきた、生身の人間であったことに思い至るのです。

カラヤンとフルトヴェングラー、このかつては激しく対立し、正反対の音楽的主張をもっていたかに見えた二人の巨匠が、さまざまな視点から異なる光を当てることで、微妙な像の揺らぎを見せます。そこに何を見いだすか。最終的にそれは、読者にゆだねられていると思うのです。
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