私の知人は8月半ばに米国債の金利が急低下したときに割引債(2028年満期)を大手証券A社の店頭で売りました。単価は57.82です。一方、この時の客にとっての買値は61.19でした。この売値と買値の差が実質的な手数料です。
証券会社が仕入れてきた米国債を客に売るわけだからサヤを抜かれるのは仕方ありませんが、株や日本国債よりはるかに高い売買コストです。ちなみに私が昨年夏に大手証券B社で手持ちの割引債(2023年満期)を売ったときは、客から見た買値が62.25、売値が60.25でした。売値と買値の差を明示している証券会社は皆無に近いから、コスト比較なんてできません。(自分や知人の経験を照合すると、おそらく某巨大証券が一番客にとって不利だと推察されますが)。
それなのに、この本のカバーには、米国債は購入手数料「なし」、売却手数料「なし」と堂々と記載しています。本文中にも「買った米国債はいつでも自由に時価(市場価格)で売却可能です。売買手数料はかかりません」(第4章。193ページ)と書いてくれています。あきれるばかりです。
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」というタイトルで、著者は個人投資家の味方で証券会社に厳しいというポーズを取っていますが、米国債に投資した経験のある者からすれば、証券会社の外国債の販売担当者の回し者のような気がしてなりません。個人投資家のためを思うのならば、売値と買値の差、つまり実質的な手数料をサイトなどで広く公開しようとしない証券会社の姿勢を取り上げるべきでしょう。
著者は売値と買値の差なんて百も承知なのにねえ。証券会社が「米国債には売買手数料はかかりません」などとPRしたら、金融庁がほうっておかない。ダイヤモンド社からの出版ですが、週刊ダイヤモンドの記者なら、こんなインチキは書きませんよ。