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34 人中、28人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
すでに『審判』を読んでいる人にこそ読んでほしい,
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レビュー対象商品: 訴訟 (光文社古典新訳文庫) (文庫)
独文業界では、ずいぶん前から『訴訟』で通っている作品だが、やっとその通りの邦題で訳された。「古典新訳文庫」の名に恥じぬすばらしい仕事。 訳者がはっきり断っている通り、16の断片(章)の順序は未決定だから、読者が面白いと思う順序で適宜、 シャッフルして読んでいい。 ヨーゼフ・Kが殺されてしまう「終わり」がこの小説の結末とは限らないのだ。 まさにそれが『訴訟』の訴訟(プロセス)たるゆえん。裁判の勝敗、結末はまだ見えない。 訳者は自分の訳をピリオド奏法にたとえるが、 ピリオド・スタイルがここまで流行ったのは、単に元のテクストに忠実であろうとしたからだけじゃなく、 結果として出てきた、ごつごつした刺激的な響きに、滑らかな現代楽器にはない美が感じられたからだ。 これも訳者が認める通り「翻訳者は裏切り者」だから、どんなにカフカのドイツ語に忠実であろうとしても 日本語に訳せば、訳語の選択一つをとっても「裏切り」が入り込んでしまう。 それでも、訳者が単語一つ一つの意味にこだわって、そのニュアンスを最大限、拾い上げようとしているのは分かる。 池内訳は、もうここまでやりたい放題だと、かえって喝采を送りたくなるジュースキント『香水(パフューム)』などと違って、 彼としても慎重に取り組んだ仕事だと思うけど、きれいな日本語にするために、かなり原文のニュアンスを捨ててしまっている。 丘沢訳はごつごつして、読みづらい感もあるけど、池内がカラヤンだとすれば、まさしくピリオド・スタイルの美。 翻訳家はいわば演奏家だから、翻訳(演奏)にはできる限り多くの選択肢があった方がいい。 すでに『審判』という名でこの小説を知っている人にこそ、改めて別の「演奏」で読んでほしい。 喜劇的効果が感じられる部分は、ちゃんとそのように訳されているし、 鼻のきく人は、ある部分ではホモセクシュアルの臭いもかぎつけるはず。 カフカのドイツ語はそんなに難しくないから、ドイツ語で読むのがもちろんベストだが、 ドイツ語で読む人にとっては、かたわらに置くべき最良のガイドブック。
7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
大胆な終盤の章構成〜エンドレスな物語構成か ?,
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レビュー対象商品: 訴訟 (光文社古典新訳文庫) (文庫)
私が「審判」を読んだのは約30年前。当時から不条理小説の代表作として有名だったが、欠落(あるいは未筆)の章があり、また章順が必ずしもカフカの意図したもので無かった事も有名だった。本作は、「史的批判版」と呼ばれる章順かつ新訳で題名も新たに発表されたもの。"鬱々とした"雰囲気、と言う先入観を一新する訳文である。私は第一章を「審判」と読み比べて見たが、確かに乾いた文体となっており、Kが不条理の壁の中で汲々としているだけの小説とは別の印象を受けた。逮捕された当初、Kは意外と尊大で超然としているのである。むしろ、逮捕後のKの言動に不条理感を覚えた。これは訳文のせいだけではなく、初読時は「審判」と言うイメージに負けていたのだと思う。例えば、逮捕後にKは新たな女性関係を簡単に持ってしまうし、他人の思惑を無視した自己中心型の行動を取る。まるで「異邦人」の様。また、Kのオフィスでの鞭打ちシーンがあるが、これを初読時は"Kを取巻く不条理"がKの身近に迫っている例示かと思っていた。しかし考えて見れば、Kがその部屋が物置である事を知らない方が不条理である。弁護士よりも判事に影響力を持つ画家の存在も皮肉であるが、また不条理の世界である。Kの逮捕をキッカケに世の様々な不条理が噴出す仕掛けと思えた。また、金銭に関する話題が多く出てくるのも新たな発見で、卑俗な現実感との落差で不条理感を引き立てている様に思う。「大聖堂で」中の「掟の門」の挿話は相変わらず印象的。そして、「審判」で未完とされた章を、「終わり」の章の後続に持って来ると、「終わり」がKの夢であるとの解釈も可能であり、「城」と同じくエンドレスな物語構造となって、確かにカフカらしい。 兎に角、「審判」を再読させる契機になったと言う点だけでも本書の意義がある。更に、乾いた文体と章順の見直しによって、本作に新たな光を当てた貴重な書。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
囚われずに読むことの大切さ,
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レビュー対象商品: 訴訟 (光文社古典新訳文庫) (文庫)
作品を読みながら、訳者が解説で書いているように、「日常的な心理が満載で、そこはかとなくユーモアがただよっている」部分に気付かされ た気がする。 以前のように作品を、流通しているカフカ像や作品のイメージに無理やり、 押し込めることなく、読めたかも? でも、読後感は以前読んだ、新潮文庫の『審判』と余り変わらなかった。 細部にユーモアがあったり、スラップスティック的な動きがあったりと、 新たな発見があったとしても、矢張り、気が重くなり、滅入ってくる。 どこまで行っても、救いがないから…。 と言いながら、ちくま文庫の「カフカセレクション」を同時に買っている ので、今度はそちらを読むつもり。
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