奥付の著者紹介をみると、アルバイトを続けながら、
本賞への応募を繰り返したとあります。まずは、受賞お
めでとうございます。
巻末の選評をみると、本作の受賞については委員間
で議論があったようです。確かに、明朝体で書かれた
主人公の再生とゴシック体での知床の自然保護のお話
しとがなかなかかみ合わない上に、その自然保護の計
画自体に飛躍があって現実感がなく、もどかしく感じま
した。
ただ、ダッシュの後の主人公を、「口を大きく開き、貪
るように空気を肺に送り込もうとするが、もどかしいまで
に呼吸器が機能せず、心臓が早鐘のように鼓動を繰
り返す。そのまま荒い呼吸を繰り返し、放心したように
天空を仰いでいた。」(わたしも市民ランナーのひとりな
ので、この状態はよく分かります。)と書く著者の筆力
は、なかなかのものです。次作以降に、精進の結果が
開花することを期待しています。
〔付記〕 著者の受賞第1作『捜査官』(2009)を読みまし
た。公安部刑事の死の謎をキーにして展開するお話し
はまあよいとしても、犯人のテロリスト達の造型が平板
で、並みいる警察小説の書き手に伍するにはいかにも
力不足です。このままでは消えてしまいますよ。がんば
りましょう。 (2009/12)