アマゾン掲載の目次からはわかりにくいのですが、「第1章記憶・知識人・著作」では、イスラームの史書・地理書の歴史を通じた、イスラームの世界観の変遷、欧米のイスラーム史研究によりどのように現代イスラーム世界像が形作られてきたか、及び現在のイスラーム諸国での歴史教育などから、イスラームの世界観の変遷がわかります。
「第2章 国家・宗教的権威・文書」では、どのような研究史料があるのか、現在の研究の伸展状況などを、近世イランの法廷史料や総理府オスマン文書館所蔵文書などを利用した現状が紹介されています。膨大なオスマン徴税帳簿などがまだ殆ど未整理ともいえる状況で、近世欧米並の研究成果が出てくるのはまだまだこれから、という状況を知ることができます。
第3章は目次そのままの内容(「資料としての造形芸術(工芸が伝える情報、建築が伝える情報、絵画が伝える情報)」)。
総じて、「イスラームの世界観」がどのように成立し、変遷してきたのか、現在のイスラーム圏の人々の世界観はどのように成立してきたのか、現在のイスラーム史の研究状況はどのような状況なのだろうか、ということがわかる書籍となっています。欧州や中国史では、多様な分野の夥しい研究書や史書が日本で出版されているので、背表紙を眺めているだけでだいたいどのような研究具合なのか大体見て取れますが、イスラーム圏については日本語研究書も原典訳も少なく、日本で研究者が少ないのか、史料そのものが少ないのか、史料はあっても研究が伸展していないのか、など全体状況がなかなか掴めないところがありますが、本書はそのような疑問に答える内容となっています。