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最も参考になったカスタマーレビュー
2 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
史実とはかくも多様で豊穣なるものか,
By 喜八 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 記憶の歴史学 史料に見る戦国 (講談社選書メチエ) (単行本(ソフトカバー))
ジャイアンとのび太が20年後に酒を酌み交わしたら、ジャ「おれたち、毎日、楽しく遊んでたよなあ」 のび「ぼくは君に、いつもいつも、いじめられてたよねえ」となるに違いない。記憶というフィルターを通じて、史実はまったく異なる相貌を見せるのだ。 日記に書かれたことを、歴史研究者は「一次史料」として無批判に使ってしまうことが多い。古い時代になれば他に史料が残ってないの でやむを得ないともいえるが、本書は史実の一義的な確定がいかに難しいかを、「記憶」を分析の視角として用いて、きわめて興味深い実 例に則しながら明らかにしていく。ごく単純に見える史実がいかに重層的で複雑か。一つ一つの要素を切り分けていく手際は、熟練の職人 を思わせ、読み進めるうちに我知らず感嘆することがしばしばである。 歴史研究の初学者は、他によるすべがないものだから、口をそろえて「実証」をいう。だが、実証とは、実はこれほどの奥行きをもつ営為 なのである。東京大学の史料編纂室に勤務する著者は、日頃から史実と格闘しているうちに、技能を磨いたに違いない。それにしても畏るべ き技量の冴えである。読みやすいが、きわめて深い。歴史学に興味のある人にとっては、必読の書といえよう。
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