2006年に行われた講演を中心に、過去のインタビューや雑誌に掲載された短い評論などを編んだ1冊。
近年の著者の文章は、ある種の衝迫力を持って私たちにさまざまなものを突きつけてくる。著者は絶望しているのではなく、誰よりも希望し続けている。その文章は、言葉、国家、思想を「信じる」「信じない」という希望と懐疑の間に張られた細い糸の上を渡っていく。
ここにきて、著者は自らの論理の矛盾さえ恐れていない。業界からの放逐を恐れない。読者から黙殺されることをもたぶん、恐れていない。
辺見庸は、戦後誰もつくろうとしなかったスタートラインを、もう一度つくろうとしているかのように見える。「風流夢譚」事件、ペン部隊、公正を気取るのに精一杯で、何も語ることのできない現代のジャーナリズム。文学と政治が決定的に離れていったのは一体、いつだったのか。
「いまここに在ることの恥」に次ぐ本書は、「いまここにないもの/すでに失われたもの」についての記憶の碑文である。それは暗に日本語全体の死の起源をたどっていく。