「はかる」の訓読みに当てられる(この「あてる」の書き分けも紹介されるが)漢字が実にいろいろあって、特に計測の場合、どれを使えばいいのか、非常に悩ましい。特に印刷される原稿を書いていると後々まで残るので、真剣に考える。本書では、悩ましかった訓読み、全然意識したこともなかったが、複雑な訓読みがある用例、著者が資料をかき分けて見つけた非常に珍しくて面白い用例など、とにかく用例が豊富。「正しい日本語」という答えを出してくれているわけではないが、仕事として日本語と向き合った経験がある身には、「たまご」(「卵」と「玉子」の漢字がある)1つ1つの用例が考えさせられるものだった。
本書の中には、最新の日本語の用例として、安室奈美恵や椎名林檎の歌詞も出てくる。また、前著「日本の漢字」もおかしな漢字、創作漢字がたくさん出てきて非常に面白かったが、本書でも面白漢字が出てくる。青森にある、口偏に行くと書いて「さそう」と読ませる漢字の集落の訪問記が面白かった。「さそう」集落には「さそう」小学校、「さそう」さんもいるのだとか。
前著でもそうだったが、はやりの「正しい日本語」本のように、おかしな漢字や訓読みを「誤用」と決め付けず、「こういう日本語の用例もある」というスタンスがいい。ネットで嘲笑されている「愛」と書いて「ラブ」、「真極」と書いて「まっくす」と読ませるDQN命名も、用例としてまじめに紹介している。著者が冒頭でも言う、「漢字も含め言語の何が正しくて正しくないかというのは、本質的には決められない」という考えには同感だ。