このところ、不景気や国際化・実用主義などの波にのまれて、やや低迷気味の感があった理論言語学の世界だが、ようやく久々に本格的な事典がここにひとつ刊行されたのはまことに嬉しい限りである。本書の内容を、これまでの英語学や言語学の辞/事典類や概説書などと比べてみるならば、言語学がれっきとした科学の一分野として、健全な発達を遂げていることが明らかに見て取れる。認知科学や電子工学などの理科系諸分野、とりわけ生物学との密接な関連の深まりは、目を見はるほどである。また言語と音楽との関連について、他に例を見ないほど詳しく述べられているのも、音楽好きな小生にとってはこたえられない魅力のひとつになっている。正直を言うと、学生や専門外の人々に気軽に紹介するには、やや価格が高すぎるように思えるのが残念だが、本書の作成にかかわった多くの方々のご苦労を考えれば、それもいたしかたないことであろう。