私は他の方々とは違った感想を持った。
まず本書「はじめに」で書かれているように、本書の目的は学派や学説の説明ではなく、「二十世紀の学問としての言語学が何につき動かされ、何をめぐって争い、全体としてどのような方向を目指してきたのかを見ることである」。したがって、細かい学説の説明は期待してはいけないし、実際そのようなことは書かれていない。
私が期待したのは、言語学という学問の学説史を通した輪郭を把握することであったが、筆者の意気込みとは裏腹にそれほど明確に把握できなかった。理由は各章内の節の歯切れの悪さであると思われる。たとえば第一章「ソシュールの言語学」とあり、ソシュール、比較言語学、青年文法学派と順に説明していく。こう言えば非常にすっきりした流れが書かれている思うかもしれないが、それぞれの節で言いたいことがあやふやで、すっきりしないまま、気が付いたら比較言語学、青年文法学派へと流れ着いてしまう。そしてその調子で、第二章、三章へと行きついてしまった印象だ。また、大きな流れをつかむことを期待したが、細かい展開や、エピソードなど横道にそれることが多々あり、それはそれで有益なのだが、私の目的とはそぐわなかった。
とはいえ、本書を読むことが無益だとは決して言わない。それほど難しくなく、すらすら読めるし、言語学のある程度の流れは、歯切れは悪いがつかむことはできる。もちろん、様々なエピソードも。言語学は門外漢なので、言語学上の評価はできないが、流れだけを得るなら別の新書、もうすこし細かい議論まで期待するなら新書以外に求めるかなと感じた。
はじめに
第一章 ソシュールの言語学
第二章 アメリカの言語学
第三章 言語の相対性と普遍性
第四章 社会言語学
第五章 クレオール学とソビエトの言語学
おわりに