20年ぐらい前の本ですが、この本(シリーズ)が出版されて初めて、フレーゲ、ラッセル、ウィトゲンシュタイン、クワイン、デビッドソン・・・・と続く英米の現代哲学、言語哲学が日本でも広く理解されるようになりました。
これ以前は、英米の現代哲学で議論の中心になっているものを理解するのが大変でした。
当時、日本語で読めるものは、ほとんど機械的な直訳や、底の浅い紹介論文や、したり顔の入門本がほとんどでした。ウィトゲンシュタインの「お言葉」を引用して、後は具にもつかない話で埋めて、これが現代哲学の最先端みたいな本に辟易していました。
学生が一人で原文読んでも高が知れてますし、大学で変な教授にでもついたら、大変な時代でした。「誰を信じればいいんだ?」と言う感じでした。
この本から始められた世代の人(研究者も含めて)は著者に感謝しましょう。その意味では、日本の現代哲学界の底上げを果たしたと言えます。説明は丁寧ですので、初心者、独学者にもいいかもしれません。内容が難しいのは当然ですね。
当時、このレベルの内容が書ける人は、少なくとも後一人はいたと思いますが、続編も含めこのボリュームで書いたということは、著者の心意気を感じます。それはトマス・アクイナスの「神学大全」に因んだタイトルにも現れています。
著者の話として、こんな事を聞いたことがあります。
「一流の哲学者になろうとしたって、よほどの天才でもなければ、何にもならない。そんなこと考えるより、真面目な二流の哲学者になりなさい。真面目な研究は後世に何がしかの成果を残せるものだ。」
いい意味で、哲学教師ですね。