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本書には読者を混乱させるような用語の用い方が散見され、中には著者が明らかに誤解をしていると考えられる箇所が多数みられる。その一つが、語彙論主義 (pp. 226-228)である。著者によると語彙論主義とは「あらゆる言語の現象を単語レベルで説明しようとする立場」としているが、言語学者の一般的な見方は、「ある統語的事実を基底-特に語彙部門-において取り扱う分析」であり、一般に入手できるどの入門書でも述べられている基本的な考え方である。このような誤解に基づいて『「○○主義」の呪縛が解けなくてはならない。』と述べているが、果たしてこのような物言いは正当なものといえるのだろうか(最近の生成文法のプログラムは「極小主義プログラム」と呼ばれているそうだが著者にとってはこの「極小主義」も「○○主義」のうちに入ってしまうのだろうか)。
さらに「心理言語学」批判を展開している箇所がある(p.113)。心理言語学の問題は「言語使用を説明しようとしない文法理論は、心理学的に不当であり不完全だと主張する」と述べているが、この箇所は、この意見が心理言語学者一般の意見であるかのような印象を与えかねない。しかし Chomsky 自身が述べているように、言語知識の使用を解明する学問としての「心理言語学」は言語研究の中心課題の一つといえるだろう。そのような心理言語学の研究をないがしろにし、不当に評価しているのではないか。
これらの指摘は「本書の目的からすると些細な問題である」という意見もあろうが、しかし、啓蒙書であるからこそ正確で誤解を招かないように書くことが著者の責任なのではないだろうか。
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