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辻邦生は、森有正を支持し続けた作家である。
美しく平易な日本語で書かれ、フランス文化とフランス語が基盤になっている辻の文章は、森によく似ていたが森よりはずっと理解しやすいような気がした。
「廻廊にて」だけは繰り返し読んで身についたような気がしていが、他の作品は平易な表現でいながら難解で、そこが森有正によく似ていた。
きちんとは読んでいないくせに、いつも気になる作家だった。
前置きが異様に長くなってしまったが、「言葉の箱」は講演集である。講演のスタイルのままで編集されているから、とてもわかりやすい。
この本を読み始めて以来、私はずっと歓喜にあふれて仕合わせな気分が続いていた。喜びで溶けてしまいそうだというのが一番近い表現だと思う。
内容的には解説にもあるとおりだ。
『小説を書く根拠、目的、方法について、様々な例を挙げながら、生き生きした口調でわかりやすく語りかける・・・中条昌平』
小説やエッセイを書いている人、書きたい人への提言という形をとっているが、実は辻邦生自身の人生論(ある意味では遺言)なのである。
少なくともあと10年も前にこの本を読んでいたら、私もまともな文章が書けるようになっていたのではないかと、もう少しで錯覚しそうになった。
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