蓮丈那智の頭の冴えが楽しめる短編集である。
.第一話 秘供養
山奥の風化し易い堆積岩に彫られた五百羅漢の謎である。
その結論は、飢饉による喫人・生け贄の風習でありそれを記憶し隠蔽するためであるという恐るべきものであった。
.第二話 大黒闇
カルトに絡む話である。
「暴力は最後の理性、宗教は最後の処方箋」という象徴的言葉がある。
そして、推理の過程において古代日本人第一世代から青銅器文明を持ち込んだ第二世代、その後鉄器文明を携えて来た第三世代となるがそこには後発組による先発民族の抹殺それに伴う神々の変貌・物語の改竄があるという原型が語られる。
.第三話 死満瓊
三種の神器とは思想であり、あるいは技術のことでもある。現実の器物はこうした思想や技術を使用することを許可したいわゆる免許証のようなものであり、それをなくしても再発行すればいいとの仮説が語られる。
.第四話 触身仏
ここでは、「封印された記憶はしばしば形を変えて甦ることがある」、「悲劇は記憶されなければならない。そして同時に悲劇は封印されなければならない」。
「エジプトのミイラは、やがて来るであろう復活の日に備えて遺体を保存するという考えである。だが、即身仏は違う。生きたまま仏になることで未来永劫衆生を救済するのが目的である。乃ち即身仏は生きている。あくまで、思想的にではあるが」との印象に残る言葉がある。
.第五話 御陰講
ここでは、「後世に伝えてはならぬ、けれども伝えなければならないという二律背反の宿命を背負ったこと」についての伝承の構造について語られている。
また、日本人はマスコミと一般人が競うようにアイドルを作り上げていく。しかし、それと同時にいかにどん底に突き落とすかを策謀する民族である。アイドルは貶められるために作られているとある。
以上、北森民俗学の快感に身を委ねた。