短期療法の世界でいつも新しい境地を模索しているビル・オハンロンさんの著作
「A Guide to Trance land 」の翻訳。
本書は催眠療法家のミルトン・エリクソンの言語パターンを中心に説明が行われ
ている。一般的に、エリクソンの言語パターンと言うと、変形生成文法のフレー
ムワークを当てはめたり、認知言語学のメタファー理論を当てはめたりして抽出
されたイディオムや構文のようなものを思い浮かべることになるだろう。もちろ
ん、個人的にはこういったロジカルなアプローチは嫌いではない。
しかし、この本のねらいは、もう少し違うところにあると思っている。
本書を読むと、オハンロンさんに「小難しい理論は保留して、エリクソンがどの
ような気持ちでその言葉をクライアントに投げかけたのか、その感じに注目して
みてください」と言われている気がするように思える。
つまり、実際にエリクソンが使った言語パターンを声に出して読み上げ、それに
自分の感覚がどのように反応しているのかに注意を向けると色々なことが自然と
浮かび上がってくるというような本だ。 もちろん、普通は英語で行うことにな
るのだろうが、翻訳がこなれていて日本でも十分伝わってくるものがある。「声
に出して味わってみる催眠言語」おそらく本書はそういう本である。逆の言い方
をすると理屈で分析しても見えないことが直観的に理解できる本だと思う。