出版社/著者からの内容紹介
本書はサン・ピエトロ大聖堂のピエタを題材とした「かくも生存徴候にみちたキリストが死んでいるのか?」に始まり24章にわたり、彫刻史上最大の巨人ミケランジェロのほとんど全作品ならびに彼の生い立ちを題材に、今まで数限りなくある彼に関する著作とは全く違った「解剖学というより医学という切り口」で、彼の彫刻に秘められた真実に迫る快作である。
「この小文はミケランジェロ作品を筋や静脈などの、いわゆる体表解剖学や美術解剖学の視点から考えるという立場をとっているので、どちらかと言えば芸や術に関する知識の話が中心となる。これらに加えて、ミケランジェロの幼少期を振り返ることによって彼の精神形成のプロセスを少しなりとも理解することが出来れば、作品をより深く味わうことができるのではないだろうか」(第六章 ミケランジェロの生い立ち(1))と著者が述べているように、内容的には、ミケランジェロ作品の解剖学的解説と彼の精神形成のプロセスと作品とのかかわりが中心であるが、話題に応じて、医学史、循環生理学、感染症学、脳科学、児童心理学へと、その思考は柔軟かつ深く広範囲に展開されている。また、第七章に記述されている被虐待児の<傷ついた脳>をはじめ、殺伐とした現代社会への警鐘となるような鋭い指摘も少なからず含まれており考えさせられることも多い。
読むうちに著者篠原治道先生と一緒にミケランジェロの彫刻を鑑賞し、イタリアの都市や田舎を歩いている気分に引き込まれる。
著者について
篠原治道(しのはらはるみち)
1947年富山県生まれ。
金沢大学」医学部卒業。
富山医科薬科大学看護学部教授を経て、金沢医科大学医学部分子細胞形態科学(解剖学)教授。
専門:人体の肉眼解剖学。電子顕微鏡や免疫組織化学を使った研究はヒトの骨、筋、神経、感覚器、脳など多岐にわたる。日本解剖学会評議員。