題名からは、実際の解剖がどのように行われるか?といったレポート様の内容と想像していたが、全く違っていて、解剖をするという学問は何なのか、人の体の構造を知ることにどのような意味があるのか?という「解剖学」についてのお話だった。
各章で、解剖がどのように行われるものか、目的は何か、解剖の歴史、人が人の体の構造を知りたがる要求にはどのような考え方の背景があるか、からだとはそもそも何か(心と区別するものか?)、などが平易な文章でリズム良く書かれており、大変読みやすい。以前同著者の「からだを読む」を読み、その内容をじっくり理解しながら読んだ経験のためかもしれないが、同じことがよりわかりやすく書かれていると感じる部分も多かった。日本と世界の解剖の歴史の話は、世界情勢の中での移り変わりが臨場感を持って描かれ、読んでいて単純に楽しめた。
それぞれの章は、客観的な事実と、それに対する養老先生の見方・考え方が織り交ぜて書かれ、ある事柄をどう解釈するか、それはどのような考え方に基づくものか、そういう思考の道筋が率直に理解できるようになっていると感じた。それらの基本的な考え方は、これまで読んだ先生の著作で知っていたものが多くあったが、解剖学という学問を様々な角度から考えていくことで、そうした哲学が生まれたのだということがわかった。「養老先生のものの考え方」の理解の整理に最適。