毀誉褒貶が激しい外科医ハンターの下に名士バスカヴィル卿より、領地に出没し、人々を恐怖のどん底に陥れている謎の「獣」退治の要請が…。
18世紀の近代外科医の祖で、博物学者、かつ墓荒らしの顔を持つ等、多面性を誇る奇人ジョン・ハンターをモデルにした漫画です。
SF作家吉川良太郎氏の原作を得て、新鋭黒釜ナオ氏が「ブラック・ジャックと一ノ関圭を意識した。」と語る表紙の人物、主人公ハンターのキャラクターデザインに見られる漫画的なデフォルメと医学書挿画さながらの硬質な細密さが混在した実に濃い絵で熱筆を振るっています。
エピソード「バスカヴィル家の獣」に丸々費やした本巻は前巻に比べやや長く難解で、黒釜氏の描く絵は時に重過ぎますが、産業革命によって個人の内面や生活が否応無しに変わらざるを得なかった時代の生命、宗教、科学、政治と言う重いテーマを実在人物や事件と共にメタフィクショナルに織り込んだ作風は大変なケレン味に満ちており、一度嵌ると堪らない魅力が有ります。
恐ろしく手の掛かりそうな濃い絵と連載誌の休刊,WEB移行と言う不運も有り、新作の発表が滞りがちですが、実に個性的で面白い漫画です。
お薦めです。
黒釜氏によるオマケあとがき漫画1Pと吉川氏による当時の世相を補足するコラムが付いています。