「全訳 漢辞海」と併用していますが、やはり意味の網羅性では「新字源」
が頼りになります。その点では、今なお小型の漢和辞典では右に出るもの
がないと思います。訓や字義の信頼性が高いという定評も頷ける内容です。
私が少し難しい漢文を読む時に、一冊だけ手元に置くならこの辞書を選び
ます。
例えば「新字源」には「正」に「まと(的)」の意味が採られ、熟語の「正鵠」
は「ゆみの的。また、的の中心」ときちんと載っています。「正鵠」という
熟語は本来どちらも「的」という同義語の「正」と「鵠」が並列してできた
「的」という意味の熟語ですが、「全訳 漢字海」では「正」に「的」の意味
があることを落としてしまっているので、「正鵠」は、のちに転じた意味の
「的の中心」とだけ載っています。
また実際に用例は見たことがありませんが、「殺」に「得る。狩猟によって
獲物を得る」という意味を採っているのも感心しました。こういう用法は辞
典に載っていなければ分かりません。
ただ改訂が長くされていないことは問題で、今後、他の辞典の改定常用漢
字表への対応が進むと、辞典としての価値が低下してしまうのではないか
と心配です。
また引き易さや、字義の説明の解かり易さでは、用例を多く載せ、更に読
み下し文、訳文まで載せている「全訳 漢辞海」が優れており、もし自分が
今、高校生で漢文を学ぶなら「新字源」より「全訳 漢辞海」を選ぶと思い
ます。
かつて並ぶ者のない決定版であった「新字源」改訂版の登場を切に希望
します。