本書は1997年に、十月社「近代を測量する」シリーズの1冊として刊行された同名翻訳書を復刊したもの。最初の邦訳出版当時、特に視覚芸術論の方面に関心を持つ人々の間で評判を呼び、多くの新聞・雑誌に好意的な書評が掲載されたと記憶している(吉見俊哉が、朝日で97年末の「今年の3冊」に選んでいたと思う)。私もそのシャープな議論に感銘を受けた1人だが、残念なことに版元の倒産で入手しにくくなっていた。この以文社版は旧版と邦訳タイトル・サブタイトル・訳者などが同じであることはもちろん、訳者による長尺の解説文まで再録されている。翻訳の水準はきわめて高い。
装丁は、旧版では巨大なガラス板が砕け散った室内に、向かって左手から淡い光の差し込むインスタレーション作品の青みを帯びた写真が表紙に用いられており、内容とも呼応するようで興味深かったが、これは新装となっている。
以文社が復刊を引き受けたのは、もちろん本書が優れた内容を備え、古典としての地位を保って商売として成り立つという見通しあってのことだろう。また、前後して同じ著者による『知覚の宙吊り』邦訳(平凡社)が刊行されたのに合わせて、相乗効果を見込んだ面もあるだろう。しかし、それにしても旧版が一定部数出回った上での出版には大きなリスクがあったはずで、そこに以文社の心意気のようなものを感じた。