出版社からのコメント
深刻化する社会情勢、ストレスの蔓延する日常生活。現代に生き
る私たちは目に映るもの、耳に入るものすべてに翻弄され、本来の自分自身を見
失い、苦悩し続けています。
一方、私たちを生かし続ける大自然に目を転ずれば、そこにはただ繰り返し他を
生かし、悠々と運行を続ける姿があります。
この大自然のリズム(法則)の中にこそ、私たちが大いなる喜びの中で生きてい
ける鍵が隠されていたのです。
本書ではその法則を確かに体得できる「行(ぎょう)」の真理を解き明かし、実
生活の中で実践していける方法を教えています。
抜粋
●すべての問題は人間が生み出す
今、私たちは戦後最大と言われ長引く不況に苦しんでいる。大企業が次々と倒産
し、リストラによる解雇などで失業率は上がる一方である。凶悪犯罪も日ごとに
増え、世界中のどの国よりも安全だ、と言われていたわが国でさえ、危機管理に
ついて考え直さなければいけない時期に直面している。
また、異常気象による災害も地球規模で取り上げられている。2002年夏、ヨー
ロッパ各国では大雨による浸水で多くの人びとが被害に遭った。この年、日本で
は連日猛暑が続き、平均気温も例年より上昇している。この地球温暖化について
は、すでに深刻な問題となって久しい。北極圏では地球平均の3倍のペースで進
んでおり、過去30年間で、その氷は40パーセントも薄くなったというデータが発
表されているほどだ。
こうした現象の原因を多くの学者・研究者が探り、対策論が唱えられるのに伴
い、具体的な取り組みも徐々に行われてはいる。しかしこうした問題のさらな
る深刻化にはついていけない状況だ。そのなかで、各方面の専門家が気付いてき
ていることがある。それは、ほかならぬ人間の身勝手によって、こうしたさまざ
まな問題が起きているということだ。
まさに自業自得と言ってもいいかもしれない。すべて人間が今日までしてきたこ
とのツケがまわってきたということなのだ。
たしかに科学技術はめざましい進歩を遂げてきた。それは人間の努力の賜物だろ
う。しかしそれと同時に、森林を伐採し生態系を崩し、自然破壊を進めてしまっ
たことは紛れもない事実である。そしてもはや一刻の猶予も許されない段階とな
り、人間はようやく「このままではいけない」という現実に気付き始めた。
現代はモノであふれている。美味しいものを食べ、高価なものを身に着け、豊か
な暮らしをしている人も少なくないだろう。それなのにけっきょく人びとは、幸
せになれずに多くの悩みを抱えて生活している。今こそ、私たちは人間本来の姿
を取り戻し、原点に戻って考えてみなければならない。
●自分の意思で生まれてはいない
人間はみな自分の意思で生まれてきたのではないし、死ぬときももちろん、特別
な場合を除いては自分の意思で死ぬのではない。何か自分を生かす「天」の意思
とでも呼ばれるものによって生まれ、生かされ、存在している。それならばそ
の、天の意思に沿って生きるのが本来の正しい姿ではないのだろうか。それを天
に逆らって生きるから、何かと障害が起き、もがき苦しんで生きることになる。
これは厳しく言えば、天に対する反逆とも言えるかもしれない。
人間が生まれたままの自由な裸の姿で生きられなくなってしまったのは、「学
ぶ」ということを手に入れたからだと言われている。自分の頭で、自分の思った
通りにすべてを動かしたいというエゴが生まれてしまったのだ。その結果、自然
に反逆するような道ばかりをたどることになった。「悩み」とはそこから始まっ
た、と言ってもいいだろう。人間の抱える苦悩とは、全部自分たち自身が作り出
したものなのだ。頭でいくら考えていても、何かを学んで取り戻そうとしても、
対処することなどできるはずがない。
だからこそ、そうなってしまった自分を、自由な自然のままの、本来の自分自身
に戻すには「行」しかないのである。
の言われた「智恵の完成」─き往きて彼岸に往き完全に彼岸に到達した者こそ悟
りそのものである─とは簡単なことでない。でも少しずつ近付いていくことでし
か、自由な自分を取り戻す道はないのである。それには何らかの方法で頭のなか
を空っぽにしなければならない。「何らかの方法」それが「行」である。「行」
こそ、喜びを唱えた本来の人間の姿に近付く道なのである。