内容紹介
観光業界は人口減少や顧客嗜好の多様化のためマスツーリズムのビジネスモデルが崩れ、低利益に苦しんでいます。しかし、そんな逆風の中でも業績の良い企業もありましたから、この両者の間に横たわるのは何だろうか、ということを考えさせられました。どの企業も優れた人材によって経営されており、彼らはみな勤勉で頑張っているではないか。それなのにボトムラインに表れる利益に大きな差が出ているのはどうしてなのだろうか。ヒト・モノ・カネの経営資源やそれに基づいて立てられる戦略ではなく、この両者の間にはもっと本質的な違いがあるのではないかという疑問がありました。こうした思索の中で、「利益を生みだす仕組み」としてのビジネスモデルの設計に違いがあるのではないかと考えるようになりました。本書のテーマを「観光のビジネスモデル」としたのはこのような経緯からでした。
そこで、「観光ビジネスモデル研究会」では、観光業界の明日を切り開く可能性をもつビジネスの仕組みを事例で紹介し、そのプロセスの可視化を図るとともにマーケティングなどの経営学や経済学の理論と照らし合わせて考えてみるという内容で開催していくことにしたのです。そうすることで、観光に携わるビジネスマンや行政関係者に「明るい観光の未来」を提示するとともに、ともすれば表面的な理解に終わって現場に役立つことが少ない理論を真に理解し、応用できる力をつけてもらえるようにするにはどうしたら良いのかを探っていこうという研究会の趣旨もはっきりとしてきました。
毎回の研究会では、観光関連企業と地域の観光振興事業から1つずつ事例を紹介してもらい、2つのテーマを議論するという贅沢な内容でスタートをしました。参加していただいたのは、大学の研究者だけでなく、観光庁や経済産業省、さらには東京都や神戸市などの自治体で観光行政に携わる行政マン、JTBや全日空などの観光関連産業のビジネスマンの方々でした。講師の方々には事業タイプの特性や事業の仕組みについての解説とともに、新しい挑戦的なビジネスモデルや優位性をもたらしたビジネスモデルの凄さや面白さを紹介していただきました。日々、環境の変化に向き合い、新しい切り口を追い求めている人たちが偶然と必然を積み上げながらビジネスモデルを磨き上げていく様子は、研究会の聴き手にワクワクした高揚感を与えてくれました。
本書は、研究会の講師の方々に、その時の内容を基にしてまとめていただいたものです。是非お読み下さい。 編者 流通科学大学学長 石井淳蔵
同教授 高橋一夫
出版社からのコメント
低利益体質に悩む観光業界、補助金頼りから抜け出せない観光地域づくり。この状況を打破するには売り上げや集客数ではなく「利益」を生みだす仕組みが必要だ。先行事例を紹介するとともに、その凄さや面白さを経済学・経営学の理論から読み解くことによって、ビジネスイノベーションの実践力・応用力を身につける一冊