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27 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「口と手連合説」とトンコツスープ,
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レビュー対象商品: 親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る (中公新書) (新書)
中公新書には日沼頼夫先生の『新ウイルス物語』、本川達雄先生の『ゾウの時間 ネズミの時間』など生物学に関する名著が多いと思うが、そうした系譜にまた一冊が加わったかな、と。霊長類の手を見ると、ほとんど退行してないような親指を持つクモザルを筆頭に、必ずしも親指がヒトのように太く大きくはない。では、なぜ、このような形態になっていったのかを、マダガスタルに住むアイアイの食性から説き起こしていったのが、この本。 ざっくり言ってしまえば、主食を食べやすいように、歯と手は同時に変化していった、というのが結論。アイアイは木の実の中の胚乳を取り出して食べやすくするために、犬歯をやたら発達させ、中指は胚乳をこそぎ出すために細く長くなっていったと推定している。 その後、現存する霊長類の「口と手連合説」を検証していき、初期人類は何を食べていたか、という問題に入る。狩猟肉食、種子、果肉、植物、スカベンジャー(残肉処理)と仮説を追っていき、「ボーン・ハンティング(骨猟)」仮説に至るという。 肉食獣によって放置された骨を集め、まだ着いている肉とともに、中の骨髄を主食にしていたのではないか、というのが「ボーン・ハンティング(骨猟)」仮説。初期人類の化石の周りには、草食動物の大型の骨が砕かれたものが散逸しているという。これにはけっこう震えた。 いくら大型肉食獣でも骨は折れない。折れるかもしれないが、大切な歯を犠牲にするほどの価値はない。骨を折って中の骨髄を摂取することを可能にしたのは初期人類による石器を使っての打撃だったというのがこの本の結論。そして、骨を砕くために石器を振り上げる動作が直立二足歩行を促したという最終章「石器を握る。そして、歩き出す」は、まるで『2001年 宇宙の旅』で、霊長類が骨を空に放り上げ、それが宇宙船の映像に重なっていくショットのようなジャンプ感を味わえる。 だから、この本によると人類はその初期から骨髄が大好物というか主食だった可能性もあるわけで、ならばトンコツスープがあれほど滋味豊かに感じられるわけだ、と。 ぼくは親戚の子が、大学に入ると、河合雅雄先生の『人間の由来』(上下、小学館)を贈ることにしているんだけど、人間のことを考えるとき、類人猿を媒介にすると、なんと様々なことが見えてくるのか、といつも思いかな、と。
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
ラストは驚愕の展開で知的興奮に溢れます。,
By 伊藤滋郎 "滋郎" (東京都西東京市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る (中公新書) (新書)
タイトルを見て、気軽に読み始めた僕だがその「気軽」がまずかった。まずこの本は色々な猿の手と歯の話が結構なボリュームで説明が続く、最後まで読んでみるとその意味も分かるが、副題にもある「直立二足歩行の起原に迫る」の話が出てこないばかりか人の「ヒ」すら出てこない。ただひたすらに、この植生にはこんな猿が生息していて、それはこんな食物を主食として食べている。と続く、これを読み切るのが正直つらかった。僕がタイトルから期待したのは知的興奮を伴う古代史アドベンチャーだったのだが、この猿を説明する章では、ひたすら冷静に観察し知識をある程度叩き込む作業が必要だった。だがここを補足説明すると、僕の期待に外れたのではなく、本書は、学問書からすれば至極当然の論説を当たり前にしているだけで、そこを省いてしまっては、その後の結論に対する説得力が欠けることになる。だから著者は、丁寧に、本当に丁寧に猿を説明されていた。つまり僕の期待外れの本ではなく、期待そのものが僕の間違いだったということを言いたかった。ところが後半は人の話が盛り沢山になる。そこから僕の期待以上の驚愕の知的興奮を伴うストーリーがあった。だが思わずほんまかいな?となるよりは、前半の延々と説明してきた経緯が利いて、そうか!だからあそこで手が抜けなかったんだ。と深く納得したのだった。人の歯は、肉食動物のように、肉をかみ切れるようにも、草食動物のそれとも違う。皆さんは何故だろうか?と考えたことがあるだろうか?何故親指だけ太いのか?と自問したことはあるだろうか?僕は恥ずかしながら思ったことすらなかった。 著者の時折ユーモアを交えた文体もお人柄が滲み出ていて時にぷっと吹き出す描写もあり、当たり前だが、前半後半を含めて一冊の本として完成している素晴らしい本だった。ちなみに学術書というような専門用語の羅列が続くという本でもなく、平易な言葉使いで非常に読みやすかったことも僕には有難かった。
5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
400万年前、人類は「ボーン・ハンター」として誕生した!!,
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レビュー対象商品: 親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る (中公新書) (新書)
我々人類は地球上に誕生以来、元々、何を食ってきたかを教えてくれる名著である。それどころか、このご本はちょっとソコラの本とは全く次元が違う、大傑作と言っても過言でない位のご本である。「ニッチ(Niche)概念」と「口と手連合仮説」がこの著作のキーポイントである。ニッチとは、簡単に言えば、「特定の主食」である。「口と手連合仮説」とは、「霊長類ではその種の口と手の形が主食を決定する」という仮説である。人類は臼歯のエナメル質が異様に厚く、犬歯が縮小して歯列が平らで、すり潰しに適しており、頑丈な顎としっかり握りしめる手を持っている。この口と手の特徴に対応したニッチ(Niche)とは一体何か??島博士によれば、拇指球と小指球の間に出来る窪みには石が収まるというのである。そして、すり潰すべき極く硬い物とは骨だという。そう、人類のニッチ(Niche)は骨、骨髄であったのだ。拾い集めた骨を石でかち割って、中の骨髄、海綿骨を掻き出し、それを啜って食べていたという。400万年前、人類は「ボーン・ハンター」として誕生したのだ。しかし、「ハンター」といっても、狩猟ではなく、「骨・死肉あさり」であった。その証拠に、タンザニア(人類発祥の地)には、ハザ族という現在でも骨・骨髄を常食する部族が存在する。この大地溝帯の周辺は、200万年前から基本的な生態系が変わっていない。従って、ハザ族の食い物は初期の人類とよく似ていると考えられているのだ。初期人類は1日に必要なカロリーの60%を骨髄から得ていただろうと推測されている。 「片手には石を、もう一方の手には骨を持ち、立ち上がる、そして歩き出す。」なんとドラマチックな表現だろう。博士の「口と手連合仮説」によれば直立二足歩行も「必然」なのだ。何という壮大かつ美しき理論だろう。全く反駁不可能である。 私はこのご本を2007.11.04.に購入し、その高度な内容に大層感激したのだが、その直後の11/30に発行された釜池先生の著作『医者に頼らない! 糖尿病の新常識・糖質ゼロの食事術 かまいけ式でスローエイジング!』で、先生もこのご本を大変参考にされたと同著内で書かれていたので、これにも魂消たのである。釜池先生は人類誕生(400万年前)以来、農耕を始める(1万年前)までの長い長い間、我々のご先祖は、一体何を食べてきたかに非常に興味があったと述べておられる。そして、このご本には、正にその答えが書かれていたのである。その釜池先生も着目するのキーポイントは、「骨髄、海綿骨には糖質は皆無である。」という点である。そう、人類の主食・ニッチは本来「糖質ゼロ」なのだ。まさしく釜池理論の原点である。 時代はずっと下って1万年前、人類は農耕を始め穀物に手を出した。各地に文明が芽生え、人口が爆発する基盤が固まった。サバンナのスカベンジャー(scavenger)から万物の霊長;地球上の盟主様への大出世である。しかし、これと引き替えに、人類は大きなリスク(糖質という老化の元、万病の元)を背負い込んだ。しかも、恐ろしい事にそうとは全く知らないうちに。人類がこの不都合な真実に気付くのには、21世紀になるのを待たなければならなかったのである。現在の人類は、過剰に発生した活性酸素(フリーラジカル)の消去(スカベンジ)と、過剰に摂りすぎた糖質の処理に四苦八苦、本当に難儀しているのだ。その結果、様々な病気(癌・悪性腫瘍、アルツハイマーなどの変性疾患、メタボ、糖尿病・動脈硬化などの生活習慣病、アトピーなどのアレルギー疾患、リューマチなどの自己免疫疾患、などなど挙げ出したらキリが無い)が発生し、本来の寿命がどんどん短縮し、人々に次々と不幸災難が降りかかっているのだ。確かに、文明を築き地球上の盟主様になれたのは、誠にお目出たい事なのだが・・・。 人類学、進化学に興味のある方のみならず、本来の食生活、健康長寿に関心のある方にもお勧め出来る傑作中の傑作である。是非是非、ご一読を。
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