ポワロとミス・マープルはいろいろ読んだが、おしどり探偵トミー&タペンスのシリーズは初めてでした。他の二シリーズとは、かなり趣が違っていました。
本格推理の醍醐味である意表ををつくようなトリックはなく、サスペンス性を追ってダイナミックな展開の作品です。本格推理になるとどうしても現実感が薄くトリッキーなストーリー展開になるのですが、本作品は、人間の描写、人間関係の描写が、イギリスの郊外のシンプルな生活風景の中に良く調和していて現実感があります。特に、女性の心理の描き方がしっかりしています。この物語の中にも多くの女性が登場しますが、その個性の違いがはっきりして見事です。
特に印象的だったのは、亡くした子どものショックが一生を支配している女性や、一生報われぬ愛に身を捧げる女性などでした。もちろん、タペンスの優しさの中にある無鉄砲さも魅力的でした。