類書が存在しない「孤高」の解説・演習書。
個人的には人生で最も長時間付き合った本でもある。
物理屋が書いた本ではなく、理科教育者が書いた本であり、
できるだけ数学を排して、実験から解かった事実をもとに
考察するという非常にプリミティヴな姿勢が貫かれている。
過去何度かの改訂を経て、もう補訂を得ることも無いようだが、
受験界における文化遺産にしてしまうには、あまりにも惜しい。
30年前には私立高校受験用に中学3年生が読み込んだりしていた。
最初の1ページから順に読み進めていけば次のステップへ着実に押し上げ
てくれるよう配慮されているので、文字を追うことさえ厭わなければ
誰もがある程度の自信を持つことができる。
現代の高校生であっても、とりあえず力学でお手上げになっている方がいれば
ラスト・レスキューとして上巻だけ購入してみると良い。
演習問題をこなしながら読むという授業スタイルのせいか相当に時間がかかるが、
力学理解にはどのみちどこかでこの作業をせねばならぬ。静かに耐えることだ。
私は高校1年時の中間試験が31点で、その屈辱から本書を手にしたのであるが、
鬼のように本書を読み込んで高校3年次には、原島鮮の力学が読めるようになった。
数学好きの方には逆につらい紙面だろうが、文系で物理選択をめざす方、高2進級
から理転を志す方、そしてもちろん物理の本道を行きたい方で現行課程範囲外にも
きっちり取り組んでおきたい方、本書の価値は充分にわかって貰えると思う。