北森鴻の作品の魅力のひとつに「おいしい料理」があると思う。『メインディッシュ』や『花の下にて春死なむ』のビアバーなど、読んでいるだけで、鼻先に料理の香りが漂うような美味しい小説だ。
今回も、テッキの屋台はカクテルが売りだというので、またもやそこらの店には置いてない独自のカクテルがたくさん出て来るかな〜と期待したが・・・ちょっと期待しすぎたか。まあ、推理小説であって、グルメ小説ではないのだから当たり前。
お国言葉というのは、私のような東京育ちには何ともいえない暖かみを感じさせるもので、それを話す人たちの間によそ者は入れない連帯感のようなものを感じて、ちょっとうらやましいものなのです。今回は博多弁。関西弁を使う小説はいくつか読んだことがあるけれど、博多弁は初めてだったので、テンポがいいし読みやすかった。
ただ、主人公二人のキャラクターがちょっと今ひとつはじけきれていない、というか事件とうまくからんでない感じがするのが残念でした。このキャラクター・舞台設定の必然性があまり感じられなかった。正反対の二人、一人は冷静沈着、一人は根っからのお調子者。プロの探偵ではないから、たまに失敗もするのだけど、それなりにうまく事件を解決・・・なんだけど、博多=やくざ、海外マフィアみたいなイメージの事件が多くて、それよりは屋台の親父が主人公なのだから、もう少し人の人生の裏側、みたいなものにスポットを当てた事件の方が親しみやすかったかな、と思いました。
一つ一つの話は、後味がいいものばかりではないし、すっきり終わるというよりは読者の想像にお任せ、みたいな終わり方になっていて、いまひとつ押しが足りない。『屋上物語』と同じような雰囲気を持っているのですが、『屋上物語』は、やりきれない事件であっても、その中から立ち直って前向きに生きていこうとする人たちの気持ちが感じられたので、後味がよくない結末であっても読後感は意外とさわやかだった。ただ今回は、それがもう一つ描ききれていないと言うか、ちょっとちょっと、この二人はこの先どうなっちゃうのよ、というもやもや感が残るので、100%楽しめなかったなあ、と思います。
だからこそ、続編を書いてほしいなあ。この先の二人の活躍に期待します。